農作物の安全性について

農作物の安全性に対する2つの疑問

この問題については日本人の認識は少し歪んでしまっているように感じています。 このことは「農薬を使っていないから安全です。」という言葉によく表れています。 この言葉には2つの疑問な点があります。

1.農薬の問題

1つは農薬の問題。言葉を返すと「農薬を使った作物は安全ではない」と言っているわけですが、その根拠はどこにあるのでしょうか。 現在使用されている農薬というのは、残留基準を超えないように使用する作物ごとに「希釈倍率」「散布量」「収穫前日数」「使用回数」等が明確に定められたうえで認可・登録され、流通しています。

また、残留基準も諸外国と比べ厳しいものとなっています。 動物実験で対象の成分を一生涯与え続けて健康に影響がなかったと確認できた最大の値に対し、動物とヒトとの違いや個人差を考慮して1/100した値がADI(1日許容摂取量)として定められ、それに基づいて農薬の残留基準が定められています。 私が勤務していた農業生産法人では定期的に残留農薬検査をしていましたが、検査結果は「不検出」であったり桁違いに低い値が出ることが大半で、もちろん基準値以上の残留は4年間で一度もありませんでした。

このことから農薬を正しく使用する限り、農薬を使って栽培された作物は十分に安全なものであると考えています。 また無農薬で栽培する人の中には独自の有機資材を農薬の代わりに使用しているケースがあります。忌避効果や殺虫効果がある以上なんらかの毒性が含まれていることがあると考えられますが、使用は規制されていません。生産者が使いたいだけ使っていいのです。それを考えるときちんと検証された化学農薬を正しく使用していくほうが人の健康に対しては安全なのではないでしょうか。

ただ、そうはいっても「やっぱり気持ち悪い。」という気持ちになるのは当然だと思います。 もともとは有害なものですし、残留がなくなったのが目に見えません。 また農薬の脅威を最も受けているのは生産者自身であり、私も農薬散布作業は嫌いな作業です。 これらのことから減農薬への取組は必要であり、様々な工夫を実践しています。

2.農薬以外のことには言及せず安全と言えるのか?

もう一つは農薬以外のことには言及せずに安全であると言い切っているところです。 出荷する農作物を汚染する要因は農薬だけではありません。作物は自然のなかで栽培しており、作物を完全に安全な状態にすることは困難ですが、消費者のほうで想像がつくものは対策をとっていただくことができます。

生産者として取り組まなければならないのは消費者が想像しにくいことや、衛生上問題がないよう「やられているはず」と思い込んでいる事項から出荷物の汚染を防止することだと考えます。 作業者の手の汚れ、選果場の衛生状態、梱包資材の衛生状態、虫などの異物混入など様々な事項があり、これらの問題に真摯に対応して初めて農作物の安全を語れるのではないでしょうか。

栽培に携わる「人」が作物を汚染するようなことがないようにすることが生産者の責任であると思います。

私が以前勤務していた農場では若い女性が多く働いていました。 これから結婚や出産を控えた若い人たちです。 彼女たちは知っています。 一つは「農薬は正しく使う限り、消費者の健康を害することはない。」ということ。 もう一つは「でも、農薬を散布する自分自身の健康には大きなリスクがある。」ということです。 ですので彼女たちは真夏のハウスのなかで、マスクをし、合羽を着て、手袋をはめて農薬 を散布しています。 お客様に「安全」「美味い」「手頃な価格」を提供するためにやっています。 私には”尊い”姿に映るのです。

私達について

私達は何者なのか?そして、なぜ、私たちが京丹波という土地において農業を始めることになったのか?どういう思いで果樹を育てているのか、について記しています。

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当農園ではイチジクを中心品目のひとつとしています。 私とイチジクとの出会いは前に努めていた農業生産法人になります。 その生産法人で果樹園をすることになり・・・・・・